2014年11月15日土曜日

「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎 (新潮文庫)



伊坂氏には、あまり短編・中編を書かない印象があります。
そんな彼の、四編からなる中・短編集です。
四編の内、一般的に面白いと評価されるとすれば、『フィッシュストーリー』と『ポテチ』の二編ではないかと思います。

伊坂ファンであれば、『オーデュボンの祈り』の登場人物・伊藤の「人間の悪い部分は動物と異なるところ全部だ」という台詞と、「私」と名乗る男の「意味を求めるのも人間だけかもしれない」という台詞が、対となって出てくる『動物園のエンジン』に、もしかすると何かしら感銘を受けるかもしれません。

また伊坂作品に度々登場する黒澤という男のファンであれば、『サクリファイス』で彼のクールさに惚れ直すかもしれません。
ですが、飽くまで一般的に、誰が読んでも面白いと評価されるとすれば、やはり先に挙げた二編かと思います。

個人的には『フィッシュストーリー』よりも『ポテチ』の方が好みのお話です。
内容的には、伊坂氏の『重力ピエロ』と被っているところがあります。またこういう感じか、とも思う一方、やっぱりいいなぁという読後感も得られました。

『ポテチ』には、クールな黒澤も登場します。
ただし『サクリファイス』と違って、こちらでは話の脇をきっちり固めてくれる脇役をこなすに留まっています。
主役は、お人好しの空き巣・今村とその不貞の彼女・大西です。

伊坂氏が、不貞の女性を主役の座に据えるのは珍しいです。
個人的には嫌いなタイプです。
最後まで彼女には感情移入できませんでした。

今村の方はと言うと、大西とは対照的です。
人を食った語りの映える伊坂氏の文章と、今村のキャラが見事にマッチしています。
今まで目立つことのなかった端役が、ここに来て大躍進です。
どうして空き巣なんかすることになったんですかって、小一時間ほど問い詰めたいです。

私の感想では、話の内容がさっぱりわからないですと? わからないように書いているので、これでいいのです。


伊坂氏の描く悪役には二通りあります。
とても悪い悪人と、あまり悪くない悪人です。
前者はまさに悪で、許しがたい感情に襲われます。
後者は、悪人というよりもダークヒーローであったり、間抜けなダークヒーローだったりします。
伊坂氏にはこれからも、いろんな悪人をたくさん書いてもらいたいものです。
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