2012年6月27日水曜日

「背の目」道尾秀介 (幻冬舎文庫)


あらすじ
 売れないホラー作家・道尾秀介は、自身が訪れた福島県白峠村での不思議な体験について、心霊現象を探求しているという大学時代の友人、真備庄介に相談を持ち掛ける。
 ちょうどその頃、真備庄介は白峠村とその隣町で相次ぐ自殺者の友人・知人から似たような相談を受けていた。果たして心霊現象は本当に存在し、奇妙な出来事に関係しているのか、その調査に出向く真備・道尾一行。
 子供の神隠し、自殺者の生前の写真の背中に写る目、白峠村の河原で道尾秀介が耳にした妙な声、これらの謎に挑む真備シリーズ第一作です。

 霊現象探求所所長を務める真備庄介が主人公のホラー小説です。
 京極夏彦氏の長編小説で挫折してしまった人は、「背の目」の方が向いているかもしれません。同じようなことが「背の目」の方で簡潔に書かれていますので。先に京極氏の「姑獲鳥の夏」を読み終えてしまっていると、二番煎じ・薄っぺらいという感想が出てくるかもしれませんが。


 京極氏の「姑獲鳥の夏」は推理小説に、道尾氏の「背の目」をホラー小説に分類しているのには訳があります。理由は簡単です。道尾氏の「背の目」では、心霊現象としか言いようのないラストが待っているからです。
 そのラストはご自身でお読み頂いて、ご確認下さい。

2012年6月22日金曜日

「サイコパス」柴田哲孝 (徳間書店)



 主人公のFBI元捜査官エミコ・クルーニルがエロイです。露出狂及び羞恥系マゾの気があります。その辺にちょっと興奮しました。

 内容の方ですが、新宿歌舞伎町の一角にある公園で白人女性のバラバラ死体が発見され、その犯人探しの依頼を受けた主人公がプロファイリングで犯人像を描き出していくというお話です。


 正直言うとプロファイリングにイマイチ感があって、おお! と言った感動はありません。
 それよりもこの小説の中でさらっと述べられている、日本の殺人事件に関する犯人検挙率の高さのカラクリに注目すべきかと思います。被害者の身元が不明の場合、殺人事件ではなく死体遺棄事件として取り扱われるということ。そして死体遺棄事件の場合、司法解剖も十分にされないままで犯人検挙が難しいということ。

 もし明らかに他殺だと分かる死体遺棄事件も殺人事件として類別してしまうと、日本の殺人事件の犯人検挙率って実はさほど高くないということです。

 でもそういう情報は公にせず隠しておく方が犯罪防止にも繋がるという狙いがあるのかもしれません。ただその影で厳しい捜索を逃れおおせている人間もいるというのは、問題があるようにも思えますね。

2012年6月16日土曜日

「GEQ 大地震」柴田哲孝 (角川文庫)



 阪神・淡路大震災を扱った小説です。
 著者が当時の実際の被災者から聞いたことを元に、本来ノンフィクションとして執筆予定だったものが、物証がないがため、その事実で埋めきれない部分を創作の体裁で仕上げ、小説として描かれた物語です。

 阪神・淡路大震災以外にもアメリカの「9.11事件」や中国四川大地震、スマトラ島沖大地震についても触れられており、どこまで信じて良いのか俄かには信じがたい内容です。地震は果たして本当に、人工的に発生させることができ得るものなのでしょうか。

 そういう部分は脇に除けておいたとしても、これまでの歴史における様々な局面において国際的な取り引きとしての陰謀というものは、十分ありえるのもまた事実だと思います。
 マスコミの報道を鵜呑みにしてしまわずに、事実はどうなのか、またその背景や経緯とはどのようなものかと、自らの頭で考える契機を与えてくれる小説ではないでしょうか。


 また自然による災厄というものは諦めるしかない、というのが一般的ですが、それを誰かのせいにできれば、それはそれで恐ろしくもありますが、恨みの感情を向ける相手がいれば、そのやりきれなさを誤魔化すことはできるかもしれません。

2012年6月12日火曜日

「THE WAR 異聞太平洋戦記」柴田哲孝 (講談社)



 太平洋戦争の謎を取り扱った小説です。
 個人的には嫌いではありません。太平洋戦争の発端そのものが、本来アメリカと水面下で仕組まれた予定調和であった、といった陰謀論やらが出てきます。
 事実なのかフィクションなのか。

 講談社のHPの内容紹介によると、「事実に基づいたフィクションである」らしいです。
 当時の情報や情勢を私達が知るには、過去の文献などを調べるしかないのですが、客観的に事実が記述された資料ということになると、どの文献が一番信用できるのか、甚だ疑問です。


 歴史というものは、その紡ぎ手次第で、ほんの少し記述を変えるだけで、読み手に与える印象を180度変えてしまいます。「侵略・侵攻」といった言葉も「国益となる経済圏の拡大・拡張」と変えてしまえば、仮に同じ事象を指していたとしても読み手側の受ける印象は大きく違ってきます。怖いですね。
 そういう意味で、この小説を読むことで今知っている自身の知識や情報というものを今一度疑ってみる、別の角度や切り口で考えてみる、というのもまたいいのではないでしょうか。

 一番印象に残っているのは、限りなく史実・ノンフィクションであろう「八重島事件」の話でした。
 「真珠湾攻撃」のアメリカの陰謀説は結構有名らしいのですが、私はこの小説でそういう説があるのかと驚きましたし、「山本五十六」の話ではフリーメーソンの話はともかくとしても、本来親米派であるはずの山本五十六の言動が、いろいろな矛盾を抱えていた背景を考察する上で、面白い話だと思いました。

2012年6月6日水曜日

「聖女の救済」東野圭吾 (文春文庫)



 ガリレオシリーズ第5弾です。
 主人公は湯川学というよりも、むしろ彼の学生時代以来の友人であり、いつも事件の解明を依頼してくる警視庁捜査一課所属の草薙俊平です。

 今回、独身で恋人もいない草薙俊平が、ある事件の容疑者・真柴綾音に恋をします。
 ある事件とは、真柴綾音の夫である真柴義孝が何者かによって毒殺されるも、毒物の混入経路及び関係者のアリバイによって、犯人の特定ができないというものです。

 最終的に湯川学が導き出した答えは、可能ではあるが現実的ではない、という奇妙なもの。
 さて、草薙俊平の恋の行方は? 犯人は一体どのように毒物を被害者に飲ませたのか? このような内容です。


 ぶっちゃけ、犯人自体はすぐに見当はつくのですが、そのトリックが極めてありえないのです。ありえないけども、それしか考えられないのならそれしかない、という答えになります。
 表題にある「聖女」であったり「救済」であったりは、あまり内容に沿ったものとは思えませんでした。