2012年4月20日金曜日

「緋色の記憶」トマス・H・クック (文春文庫)



 理由はいくつかあるんですけど、実は翻訳小説って苦手なんですよね。でもお薦めされたので。
 とりあえず話の出だしと終わりに顕著に出てくるフラッシュバックの技術は、巧いと感心させられました。映像では確か映画タイタニックの最初の方とか、こういう感じのフラッシュバックが使われてたような気がします。
 映像で表すための技術がどれほどの手間が掛かるのかは分かりかねますが、それを文章で表すというのは間違いなく「巧い」と言っていいと思います。

 内容的には主人公の回想を通して、事件の背景と主人公がどのように事件と関わっていったのかが描かれていきます。回想系の小説は話の進め方がまどろっこしい、もったいぶった感じになるのが難点なのですが、この小説も例に漏れない印象。

 実は読む前に登場人物の紹介ページを見ただけで、主人公が犯人に違いないと一人で勝手に決め付けて読み始めたのですが……。そういう思い込みを持ったまま読むと、最初の数ページ、いや、最初の数行で自分が何かのスタンド能力を発動させたかのような錯覚に襲われます。

 この小説には拳銃の類は出てきませんが、人間関係って互いに相手に銃口向け合ってるようなストレスがあると思うんですよね。人間関係の距離が極限に近くなる=互いのおでこに銃口を押し付けあう、そんな感じ。逆に、そこに信頼関係がある=相手が撃鉄を上げることも引き金を引くこともない、と強く思っている状態だと思います。
 もし人間関係の距離だけ近く、信頼関係がない場合はどうなるのか。考えると怖いですね。


 話が横道に逸れてしまいました。どうもすみません。
 主人公は特に何もしていません。誰が悪い訳でもない。結果として悲劇が起きてしまった。ただそれだけです。
 ただある人の拳銃の引き金に掛かった指に、自分の指を添えただけ。そして相手の拳銃はもう撃鉄が上がっていると耳元でささやいただけです。ただそれだけ。時代も時代だったし、仕方のない事故のようなものだった。
 なーんて、ぬるいことを言うつもりはない。
 悪いのはヘンリー、貴様だ。貴様が美人教師を殺したのだ。このクソガキが。

 あと、この台詞は何かで使えそう、というものを引用しておきます。
「こっちがまだ準備もできていないうちに、あれこれ決断を強いられるんだから、まったく皮肉な話さ。大事なことはみんな早々に決まってしまう。どう生きていくか、どんな仕事に就くか、誰と結婚するか」
「君は一つ一つ正しい決断をしたまえよ。ヘンリー。もし決断を誤ったら、人生は……失意に終わりかねない……なぜこんな人生を生きぬかねばならないのかと、思い悩むことになる」

 そして、この小説からの教訓。
 他人の惚れた腫れたには関わるな。
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