2011年7月28日木曜日

「秘密」東野圭吾 (文春文庫)



東野圭吾氏。現在、最も売れてる作家の一人ではないでしょうか?
彼の作品のオススメ上位でよく見掛けたタイトルということで買って積ん読してたのですが、遂に読了しました。
やっとレビューが書けます。

この作家さんは読み手に最後の真実を推理させたり、確認させたりするのが好きな印象を受けました。
つい私も読み終えてからパラパラと読み返して、果たして本当はどちらだったのかと手掛かりを改めて探してみて、これでよかったのよね、なんて言葉が続きそうな、ぼんやりと庭に目をやる直子の台詞。
この辺が手掛かりの一つなのかなぁ。

あと表現自体は平易。
直接的な心情描写は抑えつつも、行間を読むことで物語の人物たちの心情を想像、補完させるのが上手いかと。
内容的には、元々の設定があり得ないような話なので何ともコメントし難いです。


ただ、もし入れ違ったのが妻と赤の他人の女性や、二人の間にいたのが娘ではなく息子で、妻が息子の身体に入った場合を想像すると面白いかもですね。

ただ最終的にはどうにも手放しでハッピーエンドを迎えるのが不自然で、落ち着きやすいところに落ち着いた印象でした。

2011年7月18日月曜日

「姑獲鳥の夏」京極夏彦 (講談社文庫)


あらすじ
古書店「京極堂」店主、中善寺秋彦の元に旧知の友人である小説家の関口巽が訪れた。
関口巽の取材する失踪事件周辺にまつわるある噂について、「京極堂」こと中善寺の意見を訊いてみようとやってきたのだ。
関口巽は問う。
「二十箇月もの間、子供を身籠っていることができると思うか」
この奇怪な、もし真実であれば不思議としか言いようがない噂に対して、京極堂はこともなげに答える。
「この世には不思議なことなど何もないのだよ」
記憶を視ることのできる超能力探偵・榎木津礼二郎、京極堂の妹・中禅寺敦子、東京警視庁の刑事・木場修太郎らを交えて、物語は展開していき、物語はいつしか関口巽の過去と深く交錯する。
失踪事件の謎、身籠る妊婦の謎、そして事件の中心「久遠寺家」の謎。
「拝み屋」京極堂の憑き物落としで導かれるこれらの謎の答えとは……。

「姑獲鳥の夏」は京極夏彦氏のデビュー作であり、百鬼夜行シリーズの第一作目です。

謎解きの肝となる部分は、ほとんど全て第一章にあります。
この第一章を手厚く読み解くことで、後の謎解きが容易く理解できます。
時代は終戦後間もない日本・東京が舞台となっていますが、現代の認知心理学に通じるような部分が博学である京極堂によって説明されています。
世界認識に係わる認知能力に対する作者の学術的な見解が示唆されているのではないかと私は思っています。

かなりの長編で積読家には敬遠されやすいかもしれません。
ですが、実際には前半の世界観についての説明部分が骨太なだけなので、中盤以降は一気に読み進めることができます。
梃子摺るとすれば、やはり第一章だろうと思いますが、ここをきちんと押さえておくことで後の百鬼夜行シリーズの読解も楽になります。

話の流れとして後半は、ちょっと都合がいい感じはしますが、これも小説という虚構の世界のなせるファンタジーだと思えば十分に許せる範囲だと思います。


ちなみに京極堂の副業「拝み屋」「憑き物落とし」といった肩書きから、魔法や魔術のような特殊な能力を連想してしまうかもしれませんが、そのようなものは出てきません。
特殊な能力者としては榎木津礼二郎という登場人物が一人いますが、彼は基本的にあまり役に立ちません。
なぜか? それはここで説明するより実際に読んで頂いて、彼の性格を知って頂くのが最短の近道だろうと思います。

あと若干グロテスクな描写シーンがありますので、そういうのが苦手な方は敬遠された方がいいかもしれません。
妖怪はどこにいるのか? 妖怪とは? 京極堂が暴く! 百鬼夜行シリーズ第一弾です。